「年収1000万以上」の求人、「年収1000万以上の人が常に意識していること」と言った本のキャッチコピー、不況になればなるほどついつい「年収1000万」というところだけに反応してしまいますが、最新のアメリカ国民を対象とした調査では年収550万円稼いでも、250万円しか稼いでいない人たちより満足度は9%しか増加せず、さらにプリンストン大学の調査では年収750万円に達すると、それ以上いくら稼ごうが、日常の幸福度の差に大きな変化は見られなかったそうです。

お金持ちになりたいのか。それとも幸せになりたいのか。

グーグルはかつて、業績トップの従業員たちに7桁のボーナスを支給していましたが、それをやめることにしたそうです。

グーグルの社内で行われた研究結果によれば、巨額の現金または株式による報酬は、争いの種になる場合が多く、「お金は人生の経験ほど重要ではない」という結論に至りました。

グーグルではお金よりも、もっと大切なものを社員に与えることにした。

グーグルは方針を変え、成果を出した従業員には報酬の代わりにグーグルの経営幹部たちと共に行く旅行をプレゼントすることにしました。採用担当のラズロ・ボック氏は次のように答えています。

「その旅行での経験、全社にわたる仲間と一緒に過ごす経験は、それに相当する金額を、いやその10倍の金額を与えた場合よりも、もっと強烈で貴重でした。そして、はるかに大きい影響力をより広く組織全体に与えたのです。」
物質的なものではなく、経験を提供。

またお金は「時間」ともよく比較されますが、チューリッヒ大学のブルーノ・フレイ氏の調査によれば、通勤時間がゼロから22分になった場合の幸福度の低下を相殺するためには、通常、収入が3分の1増える必要があり、昇給を迫ってボスを悩ますよりも、職場の近くに引っ越せば、同じくらい幸福度を増やすことができると断言しています。

職場の近くに引っ越せば給料が3割上がるぐらいの気持ちで。

平均的な人達は、1年のうちの2ヶ月をテレビを見る時間に費やしており、ヨーロッパ32カ国の1万人以上を対象に行われた調査では、一日当たり30分以上テレビを見る人は、30分未満しかテレビを見ない人よりも、人生に対する満足度が低いことが明らかになっています。

年収750万円を越えると、「お金を稼ぐこと」からは幸福度は上げることができませんが、「お金をどう使うか」によって幸福度は変化していきます。

マイケル・ノートン氏の調査によれば、スターバックスのコーヒーを自分に買った場合と、他人に買ってあげた場合とで、その日の幸福度を比べたところ、他人に買ってあげた場合の方が幸福度が高ったそうです。

次のステージへ:「どれだけお金を稼ぐかではなく、どのようにお金を使うか」

世界一の大富豪、ウォーレン・バフェットが財産の99%を寄付することについて、「この決定以上の幸せを感じたことはない」と述べているように、バフェットの投資の仕方よりも、バフェットのお金の使い方から学ぶことの方が多いのかもしれません。

個人資産から数兆円を寄付:「この決定以上の幸せを感じたことはない」

お金が無くても、楽しく生きていければそれで良いという根拠の無い楽観視はあまり説得力がありませんが、人生は「お金=幸せ」というほど単純なものでもなさそうです。

もし人生の目的がお金を手に入れることではなく、幸せになることだとしたら上司を説得して給料を上げてもらうよりも、通勤時間を減らしたり、テレビを見る時間を極力少なくすることの方が幸せになる近道なのかもしれません。

ちょっと視点を変えてみることで、大きな変化に気づくのではないでしょうか。

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自分の経験からも、特に根拠があるわけではありませんが、メール返信の速さは「信頼関係を築く」という意味で、もの凄く大事な気がします。

カリフォルニア大学アーバイン校のJudy Olson教授によれば、Facebookメッセージなども含め、声や体の動きがわからない中、テキストだけで行われるコミュニケーションではどれだけ速く返信するかが、その人への「信頼度」を表すそうです。



2011年までグーグルCEOを務めたエリック・シュミット氏はメールの返信について次のように述べています。

「すぐ返信する。世の中にはメールの返信が速く信頼できる人とそうでない人がいる。前者になるように努力しよう。私たちが知っている中でもとびきり優秀で、しかもとびきり忙しい人は、たいていメール返信が速い。」

「普通の人が返信しないのはもっと悪い意味が込められている。”たいていは忙しすぎて、いつ返信できるか、そもそも返信できるかわからない。返事がほしければ、そのまま待っていてくれ。ついでにあんたのことは嫌いだ” という意味だ。」

忙しければ忙しい人ほどメールの返信が速い。

さらにシュミット氏によれば、誰にでも速くメール返信することでコミュニケーションの好循環が生まれ、フラットで強い企業文化が作られるそうです。

「返信は短くていい。私がよく使うのは ”了解” だ。迅速な返信能力に自信があるのなら、返信しない場合はどういう意味か、周囲にはっきりと伝えておくこともできる。私たちの場合、それは通常”了解したから、進めてくれ”の意味だ。」

12210693875_499110fe1b_z↑コミュニケーションの好循環が本当の企業文化を作る。(Pic by Flickr)

Study Hackの記事によれば、素早い返信で「常につながっている状態」が作られることで、企業の限界生産性(marginal productivity)が上がるそうです。

そしてメール返信だけではなく、SNS上で顧客との関係を築く際も、返信の速さは重要視され、サウスウエスト航空の返信の速さが顧客との信頼につながっていると指摘している記事もあります。

スクリーンショット 2014-10-14 22.56.26↑顧客の信頼度は意外に簡単なことから生まれる(サウスウエスト航空のツイッターのキャプチャー)

ただしすべてのコミュニケーションが平等にカウントされるわけではありません。動画のコミュニケーションは音声よりも信頼度を高め、音声はテキストよりも信頼度が高いのも事実です。

例えばカリフォルニア州の州知事を務めたシュワルツェネッガー氏は、Twitterのフォロワーが良いアイデアを出してくれたお礼を動画で行い、フォロワーとの信頼度を高めました。



ビジネスに限らず、日常の生活においてもコミュニケーションが上手くいくか、いかないかが成功の命運を分けると言っても過言ではありません。

昔、まだ質で勝負できないのであれば、「圧倒的なスピード」で勝負するという話を聞いたことがありますが、声や体の動きが見えない中でコミュニケーションを取ることが多い現在では、メールを圧倒的に速く返信するだけでも大きな付加価値になります。

そう考えれば、エリック・シュミットが指摘する通り、忙しくて仕事ができる人ほど、メールの返信が速いというのは十分納得ができることなのかもしれませんね。

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戦後日本は焼け野原から這い上がるため、ただ今日、明日の食べ物を確保するために働き、高度経済成長期に入ると「欧米に追いつけ追い越せ」をキーワードに成果報酬など導入しなくても、給料も売上げも面白いように上がったため、日本人全員がやる気満々でした。

しかし、1990年代にバブルが弾け、なんとか社員のモチベーションを上げなければとアメとムチのような成果報酬主義を導入する企業が増えましたが、アメリカで100年近く採用されてきた制度をいきなり日本に移植しても上手くいくはずもなく、多くの人が「働く意義」を見つけ出せなかったり、月曜の出社が恐怖となる「サザエさん病」にかかったりと早くも様々な障害が出てきています。 depression_obsessive_compulsive1↑成果報酬主義で長期的に成功している企業は存在しない (Pic by salon)

アル•ゴア副大統領のスピーチライターを務め、ベストセラー作家でもあるダニエル•ピンク氏によれば人間のモチベーションは三段階に分かれるそうです。

モチベーション1.0

生存のための本能的なモチベーション。やりたいか、やりたくないかではなく、やらなければ生きていけないから、頑張るという世界。

モチベーション2.0

アメとムチによる成果報酬によるモチベーション。人間を馬と考え、ニンジンをぶら下げてやる気を出させる、もしくは罰を与え、それを避けたいという気持ちから無理矢理やる気を出させる。

モチベーション3.0

何かを達成したいとか、社会の役に立ちたいといった個人の中から自然と出てくるモチベーションのことを指す。

掛け金のないゲームであっても「やりたいからやる」のである。職場に成果主義が導入されなくてもいなくても、自分の中に達成したいものがあるから頑張るという世界。 「お金だけでは社員のモチベーションは上げられない」

例えばアメとムチのモチベーション2.0を使って、子供に数学の勉強をさせたとしましょう。問題集を1ページ終えるごとにお小遣いを与えれば、その子はほぼ確実に、短期間、数学に夢中になりますが、長期的に考えれば、間違えなく数学そのものへの興味を失います。

それは仕事でも同じことで、デザイナーにもっと良い成果を期待して、製品がヒットすれば報酬を与えると約束すれば、当面の間、デザイナーは仕事に没頭しますが、長期的には仕事への興味を失うことになるでしょう。

さらにピンク氏によると、仕事に金銭的なモチベーションを与えると、視野がどんどん狭くなって、クリエイティブな発想ができなくなるそうです。

timthumb↑金銭的なモチベーションと創造性は反比例する (Pic by westsublimo)

Facebookのマーク•ザッカーバーグさんは高校生の時に、「Synapse Media Play」というサービスを作り、マイクロソフトから約1億円で買い取りたいというオファーを受けましたが、世の中の人に自由に使ってもらいたいという想いから、このオファーを断りました。

さらにグーグルの創業者、ラリー•ペイジさんが一番腹を立てることは、あるアイデアがどれだけ儲けられるかを言い立てることだそうです。

image (1)↑ザッカーバーグは高校生の時にモチベーション3.0に達していた (Pic by businessinsider)

田原総一郎さんはLineやリブセンス、そしてライフネット生命など急成長している日本企業を取材し、次のように述べています。

「ROE(株主資本利益率)よりもソーシャルインパクトを重視していることも、ポスト•ホリエモン世代の特徴だ。彼らは自分が儲けることより、新しい事業で社会を変えることに喜びを見出している。」

data↑リブセンス:「利益は重要ですが、利益がすべてではない。」(Pic by bloomberg)

モチベーション3.0は利益を最大化することは否定しませんが、「目的の最大化」を利益以上に重要視するため、営業会議よりもビジョン会議の方がはるかに重要になってきます。

ベンチャーキャピタリストでハーバード大学の卒業生でもあるボブ•コンプトンさんは20代と関わった時の経験を次のように話しています。

「あるとき若手社員に商品開発のスピードを上げたらストックオプションとボーナスをやると提案したら、”僕はお金を入れたら動く自動販売機じゃないんですよ、ボブ”って言われたんだ。お金を入れたら動くじゃないって?それじゃどうすれば動くんだ?今でも分からない。ハーバードで学んだことなんて全然役に立たないよ。」


働く意義を見出せなかったり、月曜の出社が恐怖となる「サザエさん病」にかかる人たちが増える中で、「仕事を何だと思ってる」、「全く近頃の若者は」と批判するのは簡単ですが、イノベーションを起こしたり、利益を最大化させる定義は時代とともに変わっており、どれだけ医学は発展しても、次の時代を担うのは、今の20代、そして30代の人たちです。



アメとムチによる成果報酬型のインセンティブは生産性が重視された20世紀の遺産となりつつあります。

本当にイノベーションを起こしたいのであれば、自分たちの価値観を押し付けるのではなく、モチベーション3.0の定義に習ったビジョンの共有に時間を使い、社員が自ら動く環境を作って上げることが大切なのではないでしょうか。

あなたの部下もお金を入れたら動く自動販売機ではないのですから。

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