こころnoトリック[14] 作:精神科医 山下悠毅
「自分を大切にする」とは ? VOL.1
前回、私は「自分を大切にしない人は、他の人からも大切にしてもらえない」という話をしました。ではこの「自分を大切にする」とはどういうことなのでしょうか。
こんな母親、あなたの周りにいませんか
子供のことには強いこだわりを持つ一方で、自分の事には気を配らない母親がいます。
●子供の食事には有機野菜だのミネラルウォータだのとこだわるのに、自分の体重管理には目をそらしている母親。
●子供の学習には胎教からお受験までとにかく必死に取り組んでいるのに、自分が勉強することには無関心な母親。
健康にせよ学習にせよ、生涯をかけて取り組み続ける事がなにより大切なはずです。最高の教育とは「親が後ろ姿を子供に見せること」だと私は考えています。しかし、こうした母親はそのことが分っていません。
なぜなのか。
それは子供のことは愛しているのかもしれませんが、自分のことは大切にできていないからです。
そして、そんな親を見て育った子供はどうなっていくのでしょうか。おそらくですが、やがてはその親と同じような「自分を大切にできない大人」になるのです。
「目の前」ではなく「未来」の視点で考える
母親は、いつだって子供の未来を考えます。将来子供がより大きな幸せを掴めるように願っているのです。しかし、先ほどの様な母親はこと自分に関しては目の前の幸せばかり求めてしまうのです。
「今が楽しければそれでよい」と娯楽的な活動ばかりに時間をさき、ついつい食べ過ぎや飲み過ぎの日々を送るのです。そして、こういった状態こそがまさしく「窓が割れている」=「自分を大切にしていない」状態と言えるのです。
靴やバッグを磨いていますか?
思い出してください。あなたが小さかった頃、お母さんはあなたの汚れた上履きを一生懸命洗ってくれていたはずです。なぜでしょうか。
それは、日頃から履く靴やバッグは、あなたの体の一部だからです。
こんな話をすると「じゃあ、高級な靴やバッグを持てばいいんですか」と思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。私が言いたいのは、たとえ安かろうと、またそれが兄弟のおさがりだろうと「いつも大切に磨いたものを身につけている」――この姿勢こそが「自分を大切にする」ということなのです。
例えば「タバコを吸う」ことについて
よく、私は女性から「やっぱりタバコって、止めたほうがいいですか」と聞かれます。
こんな時も「もし、自分の子供がタバコを吸っていたらどう感じるか」この視点から考えてみて欲しいのです。私は「タバコを止めるべきだ」とは、本当にこれっぽっちも思っていません。
――タバコで肺がんになる確率より、交通事故死の方がよっぽどリスクが高いです。
自分はタバコを吸っていて、彼女がタバコを吸うのを全く気にしない男性だってたくさんいます。では、なにが言いたいのか。それは「自分を大切にできているかどうか」。
つまり「自分の子供がタバコを吸っていたら自分はどう感じるか」、この質問を自分に投げかけたけたときに、その答えと自分の行動が一致しているかどうか、そこが最も重要なのです。
人から大切にされるには、自分で自分を大切にする必要があります。
そしてそのためには「自分を自分の子供のように扱う」この視点がとても大切になってくるのです。
健康のこと、仕事や勉強のこと、好きな人との関係性、この辺りをもう一度そういった視点で見つめなおしてみてください。「よりよい未来を自分の手で創りあげていく」、こういった姿勢こそが「自分を大切にする」ということなのです。
そして「自分を大切にする」という話の中で、もう一つ恋愛をする上でとても大切な話があります。次回はこのことについて話してみたいと思います。
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