○“思い”を“信念”まで高めることの重要性、悪条件に打ちかつすざまじい信念


潜在意識に透徹するほどの強烈な、すさまじいまでの思いを持ち、その目標を達成するための努力をしなければならない。 
つまり『こうなればいいのに……』といった弱々しい希望ではなく、より力強く『どうしても、どんなことがあっても1000万円を稼げるビジネスマンになるのだとか、オンリーワン技術を開発して成功するんだ』という強烈な思いでなくてはならない。寝ても覚めても、いつもそのことを考えているようでなければいけない。
そうすることによって、社会情勢や経済状況がいかに難しい局面にあっても、願望、目標を“思い”を“信念”まで高めることの重要性達成するための創意工夫と努力が生まれてくる。
信念は思いよりワンランク上の、非常に強いパワーがあるから、もしも「状況は我に利あらず」という逆風の場面でも、挫けることなく勇気を奮い起こすことができる。

何かというと『為替の変動で苦しい』とか『マーケットが冷え込んでいて』などという言い訳が先。うまくいかない条件を並べることは簡単、そう思うことが、自分自身を、そして会社を低迷させている元なのです。信念があれば、悪条件を乗り越えてやっていこうという気持ちになれる」

○松下幸之助氏の「ダム式経営」

景気とは、よくなったり、悪くなったりと循環していくもの、
だからこそ、経営者がリーダーシップを発揮して、高い目標を立て、強烈な意志で業績を改善、従業員の給与も上げないといけない。
「好景気だからといって、流れのままに経営するのではなく、景気が悪くなるときに備えて資金を蓄える。ダムが水を貯め流量を安定させるような経営をすべきだ」。聴衆の一人が「ダム式経営の大切さはわかるが、そのやり方がわからないから困っている」として、そのやり方を尋ねると、幸之助氏は「まず、ダムをつくろうと思わんとあきまへんなあ」と答えた。具体的なノウハウを期待していた聴衆の多くは落胆し、失笑したが、稲盛氏はそのとき、一途に思い続けることの重要性を理解し、強い衝撃を受けた。

○稲盛塾

中小企業といえども、一城の主である経営者には、素晴らしい会社にして社員に幸せになってもらいたいというトップとしての信念がなければならない。いま稲盛氏は、そうした塾生に対して、ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長を例に次のように語る。

「彼は、売上高1兆円をめざして、積極的に海外戦略を進めました。いろいろな問題はあったでしょうが、起業家精神を持ち続けて、具体的な方法論を考えることでその目標をクリア。いうまでもなく柳井さんが、トップとして信念を持ち続けた結果といっていいでしょう」

ただ、そうはいっても自分一人だけでは成果は期待できない。自分だけではなく、組織・チームのメンバー一人ひとりとも信念を共有し、一緒になって考え、行動したとき、知恵も湧き、集団は目的に向かって動き出す。

○チームメンバーと意識を共有する
○「人間として何が正しいかで判断する」という京セラの経営哲学に基づいた管理会計「京セラ会計学」
○「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」経営理念

大学を卒業後、一介の技術者として松風工業という碍が いし子を製造する会社に就職した稲盛氏は、当時まったく新しい分野だったファインセラミックスの開発を担当する。一心不乱に研究に打ち込んだ結果、事業化に成功。その後、出資者の支援を受け京セラを創業した。59年、27歳のときである。

「私の家が裕福で資産があり、それを元手に会社を設立したのであれば、オーナーとして余裕のある経営ができたでしょうが、お金もなく、実務経験もありません。黒字化は緊急課題だったのです。幸い、全員で必死の努力を重ねた結果、初年度から黒字決算になりました」

ところが創業3年目に、前の年に採用した高卒社員11人が、待遇改善を要求してきた。三日三晩話し合い、最後は納得を得たのだが、その経験を通して気づいたのは、社員と心を合わせるためにも、社員が「ここに入ってよかった。将来の生活も安定する」と思える会社にしなければならないということだった。そこから「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という京セラの経営理念が生まれた。

稲盛氏は「それを実現するには、どうしても高収益体質の企業にしなければなりません。私は、経営を学んでいく過程で、会計が現代経営の中枢と考えるようになりました。会社を長期的に発展させるためには、財務状況の実態を正確に把握されなければならないと気づいたのです」

やがてこれが、あの有名な「京セラ会計学」に昇華していく。それは、「人間として何が正しいかで判断する」という京セラの経営哲学に基づいた管理会計。振り返ってみれば、日本の社会は80年代からはじまったバブル経済の熱狂に踊らされた企業の経営者が過剰な投資に走り、個人も財テクなどでアブク銭を追いかけた。しかし、バブルは崩壊し、その後はデフレスパイラルがはじまり、企業業績は低迷し、貧富の差も拡大してしまった。

そんななか、バブル経済の熱狂に流されず、一代で京セラを世界的な会社に育て上げた稲盛氏の生きざまと経営術はクローズアップされたのだ。お客様にとって、社員にとって、本当によい企業であるためには高収益体質の企業であらねばならない。ずさんな経営体質ではいずれ赤字を垂れ流し、社員を苦しめるだろう。それは家計においても同じことなのだ。

○一般人のケチとは違う 

事実、稲盛氏は企業経営におけるお金の哲学を実生活でも体現している。1兆円規模の会計を扱う一方で、会食の弁当の原価に目を光らせる。経営の神様と呼ばれる稲盛氏の公私両面から正しいお金の使い方を学ぼう。

プレジデントオンラインよりまとめ。
http://president.jp/articles/-/15156